わたしのバイク道 第1回:女性ライダーが10万人を超えた——変わったのは何か
女性ライダーが10万人を超えた今、何が変わって何が変わっていないのか。28年間乗り続けた筆者が、「乗りたい人みんなのもの」へ向けて書き始める創刊号。
この記事の注目ポイント
- バイクを「誰でも選べるもの」にするには、車両の軽さだけでなく装備サイズ、接客、コミュニティの壁も見直す必要がある。
- 性別で車種を狭めず、体格、経験、用途に合う選択肢と安全な練習環境を増やすことが次の一人を支える。
バイクブームのころ、免許を取って原付で走り出したときの解放感は今でも覚えています。あの瞬間の「自分だけの速度」という感覚は、何年経っても色あせない。そしてその後、何度も「女性はバイクに向いていない」という言葉を聞かされた。仲間から、家族から、見知らぬ人から。最初は傷ついたけれど、だんだん「そういう人たちに見せてやろう」という気持ちに変わっていった。だからこそ書き続けています。「わたしのバイク道」を始めるにあたって、まず数字から入りたいんですよ。2025年末、二輪免許を持つ女性ライダーの数が国内で推計10万人を超えたという報告があります。この数字は、単純な増加だけじゃなく、何かが根本的に変わった結果だと思います。
何が変わったのか。わたしが感じているのは、「バイクに乗る理由」が多様になったことですね。かつての女性ライダーには、ある種の「覚悟」が必要でした。「こんな趣味でいいの?」「危なくない?」という周囲の視線と戦う覚悟です。でも今、バイクキャンプの動画がSNSで何万いいねも集まり、女性ライダーのYouTuberが登録者数十万人を超えている時代になりました。「バイクに乗る女性」が珍しくなくなった。それは社会の認識が変わったということであり、バイクというものが「乗りたい人みんなのもの」になってきたということだと思います。わたし自身がバイクを始めたときに感じた「なぜ女性がバイクに?」という空気と、今の若い女性ライダーたちが感じているものは、きっと全然違うはずです。それは本当に良かったと思っているんですよ。
でも、わたしは手放しに「良くなった」とは言いたくないんですよ。数字が増えたことと、バイクライフの環境が整ったことは同じじゃない。免許を取っても、最初の一台を買うところで躊躇する女性は今も多いと思います。バイク販売店の接客で「女性向け」として小排気量だけを勧められる、という話はまだ聞きますね。ウェアや装備の選択肢が男性用中心であることも大きくは変わっていない。ヘルメットの内装サイズ設計、グローブの手指の長さ比率、ジャケットの肩幅と胸周りのバランス——これらは女性の体型に合わせた設計が進んではいるものの、選べる幅はまだ狭い。数字の増加は「可能性の拡大」であって、「環境の整備」はまだ道半ばだとわたしは見ています。これは批判ではなく、現実として知っておいてほしいことなんですよ。知った上で動けば、解決策は見えやすくなるから。
わたしがこの連載を通してやりたいことは、背中を押したくて書く、ということに尽きます。「バイクに乗りたいけど怖い」と思っている人、「周囲に反対されている」という人、「何から始めればいいかわからない」という人——そういう人たちに向けて書きたいんですよ。わたし自身の経験も惜しみなく使います。初めて大型に乗ったときの緊張、転倒したときの後悔と再出発、歳を重ねてから気づいた体力との付き合い方——きれいな話だけじゃなく、ちゃんとしたリアルを書くつもりです。乗りたい人みんなのものだ、というのがバイクに対するわたしの信念です。性別も年齢も体型も関係ない。ただ今の環境がそれを自動的に実現してくれるわけじゃない。だからわたしは書き続けます。10万人が20万人になる日を、ただ数字として待つのではなく、一人ひとりの「乗りたい」という気持ちに寄り添うかたちで関わっていきたいと思っています。次回は、免許の種類と取り方から。最初の選択肢がいくつあるか、意外と知られていないことを丁寧に書きますね。
一つ、伝えておきたいことがあります。この連載はバイクに乗っていない人にも読んでほしいんですよ。「バイクって面白そうだけど、自分には無理かも」と思っている人に届いてほしい。そういう人たちが「もう少し知りたい」と思うきっかけになれたら、連載として成功だと思っています。バイクに乗る人を増やしたい——というよりも、「乗ってみたい」という気持ちを持っている人が、その気持ちを諦めなくていい環境を作りたい。それがわたしの本当の目的なんですよ。バイクは怖くない。正しい知識と正しい準備があれば、誰にでも開かれている乗り物です。背中を押したくて書いている、というのはそういう意味です。乗りたい人みんなのものだ、という信念を、これからも書き続けることで実証していきますね。読んでくれたあなたにも、いつか「乗ってよかった」と思える日が来ることを願いながら書いています。
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