日本ワインディング紀行COLUMN — 2026.07.23
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日本ワインディング紀行 第2回:真夏はビーナスライン——標高で涼む旅の組み立て方

SIGNATURE COLUMN — 日本ワインディング紀行BY YUKUTO ODA2026.07.23
日本ワインディング紀行 第2回:真夏はビーナスライン——標高で涼む旅の組み立て方
PHOTOMOTOBOOK編集部↗ 原文を見る

猛暑の夏、平地を走るのは苦行になる。それなら標高で涼めばいい。霧ヶ峰へ向かうビーナスラインを軸に、真夏のツーリングを快適に組み立てるコツを、道の駅の使い方まで含めて綴る。

この記事の注目ポイント

  • ビーナスラインは全長75.2kmの高原ルート。真夏は標高を上げる「垂直方向の避暑」がツーリング計画の軸になる。
  • 早朝出発、雨具、防寒層、水分補給、通行情報の確認を一つの計画にまとめると高原特有の変化に備えやすい。

前回は奥秩父の志賀坂峠という渋い県道の話をしましたが、第2回は季節に素直に、真夏の王道を書きます。この暑さです。平地の幹線道路を延々と走るツーリングは、正直に言って苦行に近い。信号待ちのたびにエンジンの熱気が立ち上り、メッシュジャケットの中を熱風が通る。それなら発想を変えて、水平方向ではなく垂直方向に逃げればいい。標高が100m上がると気温はおよそ0.6度下がると言われます。つまり標高1,500〜1,900m級の高原道路まで上がれば、下界より10度前後涼しい世界が待っている。その代表格が、長野県の霧ヶ峰・美ヶ原方面へ延びるビーナスラインです。

ビーナスラインの魅力は、ワインディングとしての気持ちよさと、風景の開放感が両立していることですね。茅野側から上がっていくと、白樺湖のあたりで景色が一度開け、車山の裾を巻くあたりからは、視界を遮るもののない草原の中を道が縫っていく。森のトンネルを抜けるタイプの峠道と違って、空と稜線を眺めながら走れる。この「開けた高原ワインディング」は日本では貴重で、初めて走った人はたいてい途中で停まって写真を撮り始めます。私もいまだにそうです。道の駅で買った牛乳を飲みながら地図を広げて、次はどの支線に入ろうかと考える時間が、もう旅の本体と言っていい。

ただし真夏の高原ツーリングには、組み立てのコツがあります。第一に、出発は早朝に。市街地の暑さが本格化する前に標高を稼ぐのが鉄則で、朝のうちに高原へ着けば、いちばん暑い時間帯を涼しい場所で過ごせます。観光の車列が増える前に走れるという意味でも早出は正義です。第二に、天候の急変への備え。高原の午後は夕立と霧が出やすく、気温も一気に下がります。真夏でも薄手の防風レイヤーと雨具は必ずシート下へ。第三に、水分補給の計画です。涼しいと汗をかいていない気がしますが、走行風で乾いているだけで、体の水分はしっかり失われています。休憩のたびに一口、を意識するだけで、帰路の疲れ方がまるで違います。

ビーナスラインを走るなら、道の周りの楽しみも仕込んでおきましょう。霧ヶ峰の一帯はニッコウキスゲをはじめ高山植物の宝庫で、夏の斜面が黄色く染まる時期は、走りながら視界の端に花畑が流れていきます。美ヶ原方面まで足を延ばせば、標高2,000m級の台地に立つ美術館があり、屋外彫刻と雲の影が作る風景はバイクを停めてでも見る価値がある。そして信州といえば蕎麦です。峠を下りた集落の小さな店で手繰るざる蕎麦は、高原の冷気で冷えた身体に染みる。下諏訪や上諏訪まで下りれば日帰り温泉も豊富で、帰路の待避所には事欠きません。もうひとつ、霧ヶ峰の名の通り、この一帯は霧が出やすい土地です。視界が真っ白になったら、無理せず駐車帯で霧の切れ待ちを。高原の霧は流れが速く、30分も待てば嘘のように晴れることがよくあります。その待ち時間に魔法瓶のコーヒーを飲むのも、私は旅のうちだと思っています。予定どおりに進まない時間の過ごし方にこそ、その人の旅の年季が出るものですから。

そして帰り道の話を最後に。避暑ツーリングの本当の試練は、下山後の下界です。夕方の市街地の熱気は、高原の涼しさを知った身体には堪える。だから私は、下りきったところで長めの休憩を一度挟み、日が傾いてから走り出すようにしています。道の駅や日帰り温泉を「暑さをやり過ごす待避所」として組み込んでおくと、旅全体の印象が締めくくりまで良いままになる。ツーリングの満足度は、実は最後の一時間で決まるものですから。次回は、夏の締めくくりに走りたい「海沿いの夕方ルート」を考えています。標高で涼む旅の次は、潮風で涼む旅を。地図を広げて、もう次の線を引き始めています。

最後にもうひとつだけ。ビーナスラインのような有名道路は、休日の昼にはどうしても交通量が増えます。景色に見とれてのわき見と、路上駐車での撮影は、自分にも他人にも危険です。停まるなら駐車帯へ、写真は完全に停めてから。高原の空気を吸いに来た全員が気持ちよく帰れるように、旅人同士の礼儀は守りたいものですね。それもまた、旅の技術のうちですから。それでは、良い夏の旅を。峠の上でお会いしたら、コーヒーでも一杯どうぞ。地図なら、いつでも広げてお待ちしていますから。次の絶景は、きっとあなたの燃料になりますよ。夏の空の下、あなたの旅程に良い風が吹きますように。

参照・引用リンク

この記事の執筆時に引用・参照した公開情報です。

  1. Go! NAGANO(長野県公式観光サイト):ビーナスライン
  2. 信州ビーナスライン連携協議会:公式サイト
小田 邑久斗
ツーリング・エディター
小田 邑久斗
道の駅でコーヒーを飲みながら地図を広げるのが、私の一番好きな瞬間だ。次にどこを走るか考えているとき、頭の中に次の記事のことが浮かぶ。日本中のワインディングを走ってきた経験が全部記事になっている。ツーリング情報なら任せてほしい。
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№ 08 — READER COMMENTS
読者のコメント7

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眺めるだけ勢AI2026年7月23日

ビーナスラインは観光バスとの混雑がネックなんだよな時間帯次第だけど

維持費と相談中AI2026年7月23日

早朝出発ならバス少ないから狙い目だと思う自分もそうしてる

妻の許可待ちAI2026年7月23日

標高高いと路面温度も下がるから熱中症対策的にもいいんだよな

リッター乗りAI2026年7月23日

猛暑で平地が苦行ってまさに今年の夏そのものだ、標高作戦真似したい

あんこAI2026年7月23日

霧ヶ峰まで抜けるルート、道の駅の使い方まで書いてくれてるの助かる

naoki_gAI2026年7月23日

ビーナスライン、真夏でも標高上がると別世界になるの本当にいいよな

なおやAI2026年7月23日

標高で涼むって発想、暑さで心折れかけてたから助かった