スクリーンの二輪COLUMN — 2026.08.10
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スクリーンの二輪 第3回:2026年、ハリウッドはバイクを撮り直している

SIGNATURE COLUMN — スクリーンの二輪BY TOSHIO ARAKI2026.08.10
スクリーンの二輪 第3回:2026年、ハリウッドはバイクを撮り直している
PHOTOMOTOBOOK編集部↗ 原文を見る

マン島TTの実話、MotoGPを舞台にした強盗劇、そしてゴーストライダー。2026年、三方向から同時にバイク映画が動き出した。この偶然を批評の側から読み解く。

この記事の注目ポイント

  • アマゾンMGMスタジオとブラッド・ピットのプランBによるマン島TT映画は、リード・キャロリン監督・チャニング・テイタムとイヴ・ヒューソン主演。2026年5月22日に島で撮影が始まり、TT本番の練習週にマウンテンロードなど実在のコースで撮影された。
  • ネットフリックスはアラン・リッチソン主演でMotoGPを舞台にした強盗スリラーを開発中(2026年8月3日報道)。脚本は『ワイルド・スピード』のクリス・モーガンで、MotoGPが公式に協力する。
  • マーベル・スタジオは2026年7月26日のサンディエゴ・コミコンで、ライアン・ゴズリング主演・ショーン・レヴィ監督の『ゴーストライダー』を2028年公開として発表した。マーベル・スタジオ製作としては初の劇場版になる。

2026年7月26日、サンディエゴ・コミコンのホールHで、ライアン・ゴズリングがゴーストライダーとして紹介された。監督はショーン・レヴィ、公開は2028年だという。「これは、ずっと演じたかったキャラクターなんだ」と彼は壇上で言った。マーベル・スタジオとしては初の劇場版で、ニコラス・ケイジがソニーで演じた2007年と2012年の2本を継ぐことになる。私はこの報せを、単独のニュースとしては読まなかった。今年、スクリーンの上でバイクが三つの方向から同時に撮られているからだ。実話と、娯楽と、神話。三本とも制作の座組も想定する観客も違う。にもかかわらず、同じ年に同じ機械へ向かっている。ずいぶん奇妙な年である。

一本目は実話の側から来た。アマゾンMGMスタジオが、ブラッド・ピットのプランBと組んで、マン島TTを題材にした映画を撮っている。監督はリード・キャロリン、主演はチャニング・テイタムとイヴ・ヒューソンだ。撮影は2026年5月22日に島で始まり、TT本番の練習週に、グレンクラッチェリー・ロードやマウンテンロードといった実在のコース上で回された。キャロリンは「レースへの愛と、この場所への愛を捉えるのが私の仕事だ」と語り、レースウィークに島が生き返る様子こそ撮りたいのだと話している。ここが肝だと思う。セットではなく、実在の公道の、実在の一週間に行った。作品の中のバイクが記号ではなく現場になる瞬間が、この映画にはきっとある。実在の公道を実在の週に借りるということは、撮影側にとっては制約でしかない。天候も、走行枠も、島の人々の生活も動かせないからだ。それでも彼らがそれを選んだのなら、この映画が本当に欲しがっているのは速さの絵ではなく、あの一週間の空気そのものなのだと思う。

二本目はまるで逆の側から来た。8月3日、アラン・リッチソンがネットフリックスと組み、MotoGPを舞台にした強盗スリラーを立ち上げると報じられた。脚本はクリス・モーガン——『ワイルド・スピード』シリーズを何本も書いた男だ。世界中の秘宝を盗んで回るバイク窃盗団を追うため、インターポールがかつてのMotoGPの俊英を雇う。ところが盗賊団の首魁は、死んだはずの弟かもしれない。売り文句は「バイク版ワイルド・スピード」で、MotoGPが公式に協力するという。正直に書けば、私は少し身構えた。だが四輪のカルチャーにあのシリーズが何をしたかを思い出せば、軽く扱うことはできない。入口の広さは、時に作品の完成度より遠くまで届くのだ。私が身構えたのは、強盗劇という枠が、バイクを「速くて盗みに便利な道具」の位置に固定しかねないからである。ただしモーガンは、四輪のシリーズで車を家族の比喩にまで押し上げてみせた書き手でもある。期待の置きどころがあるとすれば、そこだ。

ここで日本の読者として一つ書いておきたい。バイクを主役に据えた物語を、日本は長く漫画の側で作ってきた。『あいつとララバイ』も『ばくおん!!』も、実写の予算を必要としない紙の上で、機械を登場人物として描く作法を積み上げてきた。対してハリウッドは、実写の予算と実在のレースを使って同じことをやろうとしている。どちらが優れているという話ではない。ただ、紙の上で数十年かけて磨かれてきた「機械に人格を与える」技術が、実写にどう翻訳されるのか——そこに私の関心は集まっている。

そして三本目、ゴーストライダーが神話の側から来る。燃える頭蓋と一台のバイク——あの造形の強さは、ケイジ版の出来不出来とは無関係に、40年以上生き延びてきた。あの絵が生き延びたのは、それが炎そのものの絵ではなく、炎を背負ったまま走り続けるという行為の絵だったからだと私は思っている。バイクがなければ、あの造形は成立しない。私はケイジ版の失敗を、バイクを見せ場の道具に落としてしまったことだと思っている。燃えるバイクは確かに映える。だが映えるだけの機械は、観客の記憶には住み着かないんだ。第2回で書いたとおり、『あいつとララバイ』のZが強いのは、あれが登場人物だったからだ。2026年に動き出した三本は、実話・娯楽・神話という別々の入口から、結局は同じ問いに向かっている。スクリーンの中のバイクは、道具なのか、登場人物なのか。バイクを知る前に、バイクを愛していた私にとって、これは他人事ではない。答え合わせは2028年まで、ゆっくりやろうと思う。

参照・引用リンク

この記事の執筆時に引用・参照した公開情報です。

  1. Visordown: Brad Pitt spotted at the Isle of Man TT as road racing movie filming begins
  2. JoBlo: Alan Ritchson gears up for a MotoGP heist movie for Netflix
  3. ABC News: Ryan Gosling joins Marvel as Ghost Rider in new film
荒木 斗司夫
ポップカルチャー・エディター
荒木 斗司夫
高校2年の夜、父の本棚で『あいつとララバイ』を朝まで読み切ったときには、もう「いつかバイクに乗る」と誓っていた。バイクを知る前に、バイクを愛していたんだ。映画批評を10年書いて、31歳で大型免許を取って、初代NINJAで東名に乗った日、私はスクリーンの中のカネダになった。漫画・映画・MVの中で、バイクがどう時代の空気を背負ってきたか——それを読み解くのが私の仕事だ。
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