今週のレース読みどころ 第3回:24点に5人——シルバーストンで順位表は引っくり返る
サマーブレイク明けの英国GPは8月7〜9日。首位マルティンから5位ディジャンアントニオまでわずか24点、上位6人中4人がアプリリア。元プロがシルバーストンの勝負どころを読む。
この記事の注目ポイント
- 2026年MotoGPは英国GP(8月7〜9日・シルバーストン)を前に、首位ホルヘ・マルティン208点から5位ファビオ・ディジャンアントニオ184点までわずか24点差。スプリント12点+決勝25点で1戦37点が動くため、1戦で順位が入れ替わり得る。
- ランキング上位6人のうち、マルティン・小椋藍(194点)・ベゼッキ(186点)・ラウル・フェルナンデス(159点)の4人がアプリリア勢。ドゥカティはマルケス3位190点、ディジャンアントニオ5位184点で、バニャイアは8位143点に留まる。
- シルバーストンの決勝は20周・118km(1周およそ5.9km)。高速の切り返しが連続し旋回時間が長いため、ブレーキングよりタイヤ左側の消耗管理が勝負を分ける。土曜10周のスプリント結果が日曜の指標になりやすい。
サマーブレイクが明ける。8月7日から9日、シルバーストン。俺が一年で一番好きな週末が戻ってきた。前回この連載では移籍市場の話を書いたが、正直に言えばああいう政治的な駆け引きは俺の専門じゃない。契約の裏で誰が誰に何を約束したかなんて、ピットの中にいた頃だって分からなかった。今週は違う。走る話だ。タイヤと荷重と、コーナーの入口から脱出までの話だぜ。
まず順位表を確認しておけ。英国GPを前にした時点で、ホルヘ・マルティンが208点でトップ。14点差で小椋藍が194点、そこからさらに4点差でマルク・マルケスが190点だ。4番手マルコ・ベゼッキが186点、5番手ファビオ・ディジャンアントニオが184点。1位から5位まで、たった24点しかない。スプリントで最大12点、決勝で25点。合わせて1戦で37点が動くんだ。つまり今週末ひとつで、順位表は丸ごと引っくり返る。こんな夏はそう来ない。
もうひとつ、この数字が語っていることがある。上位5人のうちマルティン、小椋、ベゼッキの3人がアプリリアだ。6番手のラウル・フェルナンデス(159点)を足せば、トップ6に4台が並ぶ。ドゥカティ勢はマルケスとディジャンアントニオ、そして143点の8番手に沈んだフランセスコ・バニャイア。「ドゥカティに乗った奴が勝つ」と言われてきた時代の空気が、今年は明らかに変わっている。ここからは俺の見立てだが、これは一台の速さの話じゃない。開発の向かった方向と、ライダーが欲しがっていたものが噛み合った時にだけ起きる現象だ。現場で見てきた身としては、そういう年のチームは全員が速くなる。上位に4台並んでいるのが何よりの証拠だろ。
で、シルバーストンだ。決勝は20周で118km、1周およそ5.9km。高速の切り返しが延々と続くレイアウトで、ここは「曲がっている時間」がとにかく長い。ブレーキで詰めて稼ぐサーキットじゃないんだ。荷重をかけたまま寝かせ続けられるか、タイヤが最後の数周まで残っているか。勝負を分けるのはそこだ。この手の高速コーナーが連続する場所では、片側の肩を休ませてやれる直線区間がほとんどない。だから終盤のグリップ低下が、そのまま順位表に出る。
実際の週末の組み立て方も言っておく。今のフォーマットでは、金曜午後のプラクティスの順位でQ2に直行できる10人が決まる。24点の中に5人がひしめいている状況で、金曜にしくじってQ1からやり直すというのは、それだけで週末の設計図が一枚破れることを意味するんだ。予選のグリッドがスプリントと決勝の両方に効く以上、金曜の1回の走行が土日の37点を左右する。テレビ中継が始まる頃には、もう勝負の半分は終わっている。そういう競技になった。
だから俺は土曜を見る。10周のスプリントで前に出られた奴が、日曜の20周でタイヤを守れる位置に立てるんだ。前を走れば自分のペースで走れる。後ろから追えば、前のマシンが乱した空気の中でフロントを押し付け続けることになる。同じ20周でも、消耗の意味がまるで違う。予選一発の速さより、土曜の10周がそのまま日曜の答えになる週末だと見ている。マルティンにしろ小椋にしろ、土曜に3番手以内へ入れるかどうかが最初の関門だ。
個人的にいちばん注目しているのは小椋だ。194点で単独2番手、トップとは14点。この位置に日本人ライダーが座っている夏を、俺は現役の頃からずっと待っていた。しかも彼が乗っているのはトラックハウスのアプリリアで、ファクトリーのマルティンと同じ機材だ。つまり言い訳の余地がない場所にいる。逆に言えば、ここで結果を出せば誰も文句を言えない。一方でバニャイアの143点というのは、正直に言って重い。8番手というのはチャンピオンを獲った男が夏に見る景色じゃないんだ。この二人のコントラストが、今年のグリッドの全部を物語っている。
小椋については来季の話も耳に入ってきているが——ほら、また政治の話に戻る。俺の口からはこれ以上言わない。194点を持ってサマーブレイクを抜けてきた男が、あの高速コーナーで何をするか。見どころはそれだけで十分だろう。ここを抜けたら次は2週間空いてアラゴンだ。つまりシルバーストンで作った差は、しばらく誰の頭にも残り続ける。日曜の午後、腰を据えて画面の前に座ってみろ。24点なんてものは、あっという間になくなるぜ。
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