アメリカン・ロードCOLUMN — 2026.08.24
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アメリカン・ロード 第5回:0.325秒で決まった土曜——ピオリアの表彰台に、アメリカ製は一台だった

SIGNATURE COLUMN — アメリカン・ロードBY TYLER HOMMA2026.08.24
アメリカン・ロード 第5回:0.325秒で決まった土曜——ピオリアの表彰台に、アメリカ製は一台だった
PHOTOMOTOBOOK編集部↗ 原文を見る

8月22日の第79回ピオリアTTは0.325秒差の決着。ヤマハ、ハーレー、KTMが並んだ表彰台とEstenson Racingの三クラス制覇から、いまの北米フラットトラックを読む。

この記事の注目ポイント

  • 第79回キャタピラー・ピオリアTTのAFTスーパーツインズは、ダラス・ダニエルズ(Estenson Racing/ヤマハMT-07)が0.325秒差で優勝。2位はブライア・バウマンのハーレーダビッドソンXG750R、3位はデイビス・フィッシャーのKTM 790デュークだった。
  • Estenson Racingは同大会で三クラスを制覇。シングルスではトム・ドレーンが今季8勝目でシーズン最多タイとなり、264点対チェイス・サートフ215点で2年連続王座を確定させた。ドレーンは2025年にAFT初の外国人チャンピオンになったオーストラリア人ライダーだ。
  • スーパーツインズの王座は9月5〜6日のスプリングフィールドマイル・ダブルヘッダー(第15・16戦)に持ち越し。ダニエルズ272点、バウマン252点、コップ249点と20点台の差で最終2戦へ入る。

0.325秒。8月22日、イリノイ州ピオリア。79回目のキャタピラー・ピオリアTTで、優勝したダラス・ダニエルズと2位のブライア・バウマンのあいだに最後まで残っていた差がそれだ。オレはこのラウンドだけは毎年カレンダーに赤丸を入れてる。ピオリアTTはフラットトラックの中でひとつだけ毛色が違うからだ。マイルでもショートトラックでもない。一周のなかにジャンプがあって、左だけじゃなく右にも曲がる。土のバンクを跳んで、着地して、また寝かせる。同じ姿勢で回り続けられないから、体力の残り方が他のコースと変わってくるんだよ。向こうのシーンだと「ピオリアを獲った奴は本物だ」って言い方をよくする。ダニエルズ本人も勝ったあとに、たぶんキャリアで一番きついメインイベントだった、と言っていた。79回も続いているレースで、いまだにチャンピオン争いの先頭にいる男にそう言わせるコースなんだ。しかも今年は全16戦のうちの第14戦、残り2戦という場面で回ってきた。順位そのものより、ここで誰が取りこぼすかを見る一戦だったわけさ。

で、その表彰台に何が並んだか。優勝がダニエルズのヤマハMT-07。2位がバウマンのハーレーダビッドソンXG750R。3位がデイビス・フィッシャーのKTM 790デュークだ。アメリカで一番アメリカらしいレースの表彰台に、アメリカ製は真ん中の一台しかない。しかも三台とも、素性をたどれば市販ロードスポーツのツインエンジンさ。専用設計のレーサーが土を独占していた時代は、とっくに終わってる。ここは好き嫌いじゃなく事実として置いておきたい。いまのAFTスーパーツインズは、市販車のエンジンをどうフレームに収めて、どうトルクを土に伝えるかを競う場所になった。ハーレーだけじゃない、というのはそういう意味でもあるんだ。バウマンがXG750Rで0.3秒台まで詰めたのは、メーカーの号令じゃなく、チームが一戦ずつ積み上げたセッティングの結果だろ。3位に入ったフィッシャーだって、乗っているのは街で売ってる790デュークの兄弟だ。エンジンの出どころが世界中に散らばっていること自体は、オレはこの競技の弱さだとは思っていない。むしろ、どこの誰でも参加できる入口がまだ開いているという話だ。

その日、Estenson Racingのヤマハは三クラス全部を持っていった。シングルスではトム・ドレーンが今季8勝目、これはシーズン最多タイの数字で、同時に二連覇まで決めている。ドレーンの264点に対して2位のチェイス・サートフが215点。残り2戦で49点差だから、もう計算上も届かない。2位にはマックス・ウェイルのKTM 450 SX-F、3位にはタレン・サンテロのホンダCRF450Rが入った。ここでオレが気になるのは、三クラスをさらったのがメーカー直営のワークスじゃなくて、独立系のチームだってことだ。向こうのシーンだと、こういうチームが強い年は若い連中の目の色が変わる。ファクトリーに拾われなくても勝てる道が見えるってことだからだ。オレがダートトラックに出ていた頃は、そこがもっと閉じていた。速い奴から順に契約が決まって、そこに入れなきゃ現実的には終わりだった。それと、ドレーンはオーストラリア人だ。彼は2025年に、AFTのタイトルを獲った初の外国人ライダーになっている。アメリカ生まれのダートトラックが、いま外から来た連中の腕試しの場になってるってことさ。悔しいかと聞かれれば、正直そこまでじゃない。門が開いてる証拠だからな。

前回のこの連載では在庫の話を書いた。ディーラーの在庫が17%減って、それでも売れているという数字の話だ。ショールームの景気と土の上の順位は、直接はつながらない。ただ、どっちも「アメリカのバイクがいまどういう形で残っているか」を映してるとオレは思ってる。売り場ではクルーザーが軸で、レースでは市販ツインの改造が軸だ。どっちも、その用途のために専用に作られた何かじゃなく、あるものをどう使うかの勝負になってる。これを痩せたと見るか、地に足がついたと見るかは人によるだろうな。オレは後者で見ている。専用の道具を用意できる金があるかどうかで勝負が決まる競技より、手元にあるものをどう仕上げるかで決まる競技のほうが、続く。少なくともオークランドじゃ、そういうやり方をしてきた連中のほうが長く残っていた。チャンピオンシップは9月5日と6日、スプリングフィールドマイルのダブルヘッダーで決まる。ダニエルズ272点、バウマン252点、そして3番手のコップが249点。マイルでの20点差なんて、一日で消える差だぜ。

参照・引用リンク

この記事の執筆時に引用・参照した公開情報です。

  1. American Flat Track:Daniels Victorious, Drane Locks Up Title in Estenson Yamaha Peoria TT Sweep
  2. American Flat Track:Grand National Championship Contenders Brace for Pivotal 79th Caterpillar Peoria TT
  3. American Flat Track:KICKER AFT Singles Crown Within Reach at Caterpillar Peoria TT
  4. American Flat Track:Event Info - 2026 Caterpillar Peoria TT
  5. Visordown:Harley-Davidson raises 2026 sales forecast as turnaround begins to gather pace
  6. MCNews.com.au:Tom Drane is the 2026 AFT Singles Champion
本間 タイラー
北米シーン担当
本間 タイラー
オークランドで育って、カスタムショップで修行して、ダートトラックに出た。日本に来てからもアメリカのバイクシーンは追い続けている。ハーレーだけじゃない、北米のバイク文化の豊かさを日本のみんなに知ってほしいと思って記事を書いている。
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