アジア二輪経済COLUMN — 2026.08.16
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アジア二輪経済 第4回:スクーターが30.8%伸びた四半期——インドは「乗る形」から変わり始めた

SIGNATURE COLUMN — アジア二輪経済BY SURESH KAWACHI2026.08.16
アジア二輪経済 第4回:スクーターが30.8%伸びた四半期——インドは「乗る形」から変わり始めた
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2026年度第1四半期、インドのスクーター販売は30.8%増でモーターサイクルの14%増を大きく上回った。GST 2.0と電動化が同時に効き、市場の重心が動いている。

この記事の注目ポイント

  • インドの2026年度第1四半期(4〜6月)スクーター販売は前年同期比30.8%増の217万9000台。モーターサイクルの14%増(330万9000台)を大きく上回り、二輪全体は563万台・20.3%増だった。
  • 2025年9月末のGST 2.0で350cc以下の二輪は28%→18%へ減税(販売台数の約97%が対象)、350cc超は40%へ増税、EVは5%据え置き。スクーターのシェアはFY2019の32%から37%へ上昇した。
  • 2026年7月のインドEV二輪登録は19万3000台超。TVSが52,538台・27.15%で首位、Bajaj 43,607台・22.53%、Ather 28,819台・14.89%と続き、Ola Electricは13,170台・6.80%まで後退した。

前回は、Bajajの輸出台数が国内販売を上回ったという話をしました。インドが「市場」であると同時に「輸出基地」になりつつある、という内容です。今回は、その同じインドを内側から見ます。輸出の数字を追いかけている間に、国内で売れている二輪の「形」のほうが先に変わっていました。Business Standardが8月10日に報じたSIAM(インド自動車工業会)のデータによれば、2026年度第1四半期(2026年4〜6月)の国内スクーター販売は前年同期比30.8%増、166万5000台から217万9000台へ伸びています。同じ四半期のモーターサイクルは14%増で、290万3000台から330万9000台。二輪全体では563万台、20.3%増でした。どちらも伸びている。ただ、伸び方が倍以上違う。市場という視点では、これは「好調」ではなく「入れ替わり」が始まった数字です。

数字が示すのは、価格の階段が作り替えられたということです。2025年9月末に施行されたGST 2.0で、350cc以下の二輪への課税は28%から18%へ下がりました。Autocar Professionalの分析によれば、この減税はインドで売られている二輪のおよそ97%を覆います。一方で350cc超は28%から40%へ上がり、電動二輪は5%のまま据え置かれた。つまり通勤と生活の足に当たる領域だけが、一段まとめて安くなったわけです。効果は数字に出ています。同誌の集計では、GST 2.0後の2025年10月から2026年2月までの販売は22%増の949万台。スクーターのシェアはFY2019の32%から37%へ上がり、モーターサイクルは64%から60%へ下がりました。1980年代半ばに日本メーカーが本格参入して以降、インドはモーターサイクルが7割を占める市場でしたが、その構図が崩れつつあります。補足すると、この減税は店頭価格を下げるだけでなく、ローンの月額を下げます。インドの二輪はローンで買われる比率が高く、月々の返済が数百ルピー軽くなるだけで手が届く層が一段広がる。値札の18%という数字は、そのまま需要の裾野の広さに変換される市場です。

もう一つの押し上げ要因が電動です。250Wを超えるe-scooterのカテゴリは20万7000台から39万3000台へほぼ倍増し、輸出は約12倍に増えました。ただし注意したいのは、EVを除いたICEスクーターだけでも22.4%増(145万7000台から178万3000台)だという点です。電動が牽引しているのは事実ですが、電動だけの現象ではない。単月で見ると競争はさらに動いています。Entrackrの集計では、2026年7月のEV二輪登録は19万3000台超。TVSが52,538台で27.15%と首位、Bajajが43,607台で22.53%、Atherが28,819台で14.89%、Hero MotoCorpが21,174台で10.94%と続き、かつて先頭を走っていたOla Electricは13,170台・6.80%、前月比19%減まで後退しました。先行者が逃げ切れない市場だ、ということです。輸出が約12倍という数字も見逃せません。国内の補助と競争で鍛えられた電動スクーターが、そのまま国外へ出始めているということです。インドや東南アジアでは、安く作ることと安く売り続けることは別の技術だと私は考えていますが、その両方が同時に整いつつある。

ここからは私の見方です。日本から見たインドは、長く「安価な小排気量モーターサイクルの国」でした。その像はもう更新したほうがいい。減税で下から押し上げられた需要が向かった先はモーターサイクルではなくスクーターで、しかもその内側でEVとICEが同時に伸びている。都市の通勤距離、女性ライダーの増加、充電インフラの整備——説明の仕方はいくつもありますが、市場という視点では「積載と乗り降りのしやすさが、排気量より優先された」という一点に集約されると見ています。これは日本メーカーにとって決して悪い話ではありません。スクーターは日本勢が長く作り込んできた商品だからです。ただし、その土俵に電動で殴り込んでいるのがTVSであり、Bajajであり、Atherである。世界の中心が移りつつある、というのは、生産の場所が移るという意味だけではないでしょう。何を二輪の標準形とするかを決める場所が移る、という意味です。日本メーカーの現地法人が、この先どの順でスクーターの新型を——それも電動を含めて——投入するのか。私はこの1年の投入順序を、いちばん正直な戦略の表明として見ています。

参照・引用リンク

この記事の執筆時に引用・参照した公開情報です。

  1. Business Standard:Scooter sales outpace motorcycles as GST cuts, EV boom reshape 2W market(2026年8月10日)
  2. Autocar Professional:Two-Wheeler Sales to Surpass Pre-Covid Level, Will Hit a New High in FY2026
  3. Entrackr:TVS extends lead in July as Ola Electric, Ather record decline in EV two-wheeler sales(2026年8月1日)
河内 スレシュ
アジア・グローバル担当
河内 スレシュ
ムンバイで育ち、バイクは生活の一部だった。今は東京にいるが、インドや東南アジアのバイク市場が世界の中心になっていくのを肌で感じている。その変化をいち早く日本語で伝えることに、使命を感じている。英語・日本語・ヒンディー語で情報を集めている。
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