アジア二輪経済COLUMN — 2026.08.24
market中国・東アジア

アジア二輪経済 第5回:2,620万台で112.8億ドル——中国の輸出は、台数より値段のほうが伸びた

SIGNATURE COLUMN — アジア二輪経済BY SURESH KAWACHI2026.08.24
アジア二輪経済 第5回:2,620万台で112.8億ドル——中国の輸出は、台数より値段のほうが伸びた
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中国の二輪輸出は2026年上半期に2,620万台・112.8億ドルで過去最高。台数23.2%増に対し金額は26.3%増と、単価のほうが動いた。米国とASEANの内訳から輸出構造の変化を読む。

この記事の注目ポイント

  • 中国の二輪輸出は2026年上半期に2,620万台・112.8億ドルで過去最高。台数23.2%増に対し金額は26.3%増で、平均単価は1台あたり約430ドル(本記事の計算)に上昇した。
  • 米国向けは390万台超・11.3億ドルで台数40%増ながら平均単価は約290ドルどまり。対してASEAN向けは台数43.2%増に対し金額が9.8億ドル・55.1%増と、単価の上昇はASEAN側で起きている。
  • 一方で中国国内の251cc以上は1〜2月累計で生産10万4,700台・12.31%減、販売10万9,700台・6%減と縮小。同期間の輸出額上位10社が輸出額全体の64.69%(9.91億ドル)を占め、上位集中が進んでいる。

2026年上半期、中国の二輪車輸出は2,620万台・112.8億ドルとなり、いずれも過去最高を更新しました。台数は前年同期比23.2%増、金額は26.3%増です。私がこの二つの数字を並べて見るのは、伸び率の差にこそ意味があるからです。金額の伸びが台数の伸びを3ポイント上回っているということは、単純に言えば、一台あたりの平均輸出価格が前年より上がっているということになります。実際に割り算をすると、上半期の平均単価は1台あたりおよそ430ドル。これは私の計算であって公表値ではありませんが、中国の輸出が「安いものを大量に」だけではなくなりつつある、という方向は読み取れるでしょう。過去最高という見出しは毎年のように出ますが、台数の記録と金額の記録は同じ意味を持ちません。市場という視点では、台数のニュース性より、この単価の変化のほうがはるかに重い出来事です。台数だけが伸びている状態は、価格競争に巻き込まれている状態と区別がつきません。金額が台数を上回って伸びて初めて、売る側が値付けの主導権を少しずつ握り始めた、と言えるようになります。

内訳を見ると、地域ごとにまったく違う顔が出てきます。米国向けは390万台超・11.3億ドルで、台数は40%増えました。ここも割り算をすると平均単価はおよそ290ドルで、全体平均の430ドルを大きく下回ります。つまり米国向けの伸びは、依然として小排気量やユーティリティ寄りの車両が主体だと考えるのが自然でしょう。一方でASEAN向けは、台数が43.2%増に対して金額が9.8億ドル・55.1%増です。金額の伸びが台数の伸びを12ポイント近く上回っている。インドや東南アジアでは、同じ「輸出が伸びた」という一行でも、中身が別物だということです。数字が示すのは、単価の上昇が起きているのは米国ではなくASEAN側だ、という順序です。なお米国とASEANを足しても金額では21億ドル余りで、112.8億ドルの2割に届きません。残りが欧州・中南米・アフリカなどに広く散っている点も、この産業の裾野の広さとして押さえておくべきでしょう。

ただし、上に向かっている話ばかりを書くのは公平ではありません。中国国内の統計では、251cc以上の大排気量クラスは1〜2月の累計で生産10万4,700台・前年同期比12.31%減、販売10万9,700台・6%減と、むしろ縮んでいます。2月単月では生産3万9,100台・19.09%増、販売4万5,900台・10.57%増と反転しているので、年初の落ち込みからは戻りつつあるという見方もできる。ここは集計期間が上半期の輸出統計と違うため、直接引き算をして論じることはできません。それでも、上半期に記録を更新したのは輸出であって、国内の大型需要ではなかった、という事実は動きません。同じ1〜2月の輸出額上位10社——大長江、隆鑫、台鈴、銀翔、新大洲本田、宗申、CFMOTO、QJMOTOR、豪進、SYM——の合計は9.91億ドルで、輸出額全体の64.69%を占めています。上位への集中は、かなりの速度で進んでいると見ています。

では、この構図をどう受け取るか。私の見立ては、中国の二輪産業がいま「国内で稼ぐ会社」と「海外で稼ぐ会社」に分かれ始めている、というものです。国内の大排気量が伸び悩むなかで、CFMOTOは6月のテストで試作スーパースポーツを315km/hまで走らせ、中国記録として発表しました。技術の看板を立てる先が、明らかに国外の目に向いている。世界の中心が移りつつある、という言い方を私はこの連載で何度かしてきましたが、より正確に言えば、移動しているのは生産地ではなく、値段の付く場所です。前回はインドで「乗る形」そのものが変わり始めたという話を書きました。今回の中国は、乗る形ではなく売り方が変わっている。日本の読者にとって意味があるのは、その先でしょう。数年後に日本のディーラーに並ぶ中国ブランドは、いま安いから売れている車両ではなく、ASEANで単価を上げた車両の延長線上にある可能性が高い。次に見るべき数字は、下半期の平均単価が430ドルからどう動くかです。ここが横ばいなら、上半期の伸びは為替と一時的な需要で説明がつく範囲でしょう。さらに上がるようなら、それは中国の二輪産業が価格帯そのものを一段引き上げたという話になり、日本メーカーにとっても他人事ではなくなります。私はその分岐点が、この下半期にあると見ています。

参照・引用リンク

この記事の執筆時に引用・参照した公開情報です。

  1. South China Morning Post:Chinese motorcycle exports roar to record highs amid tech gains, upmarket push
  2. IndexBox:Chinese Motorcycle Exports Surge 23% to Record $11.28 Billion in H1 2026
  3. MEGA CHINAMOTOR:Motorcycle Exports Maintain Strong Growth As China's Industry Data(2026年1〜2月統計)
河内 スレシュ
アジア・グローバル担当
河内 スレシュ
ムンバイで育ち、バイクは生活の一部だった。今は東京にいるが、インドや東南アジアのバイク市場が世界の中心になっていくのを肌で感じている。その変化をいち早く日本語で伝えることに、使命を感じている。英語・日本語・ヒンディー語で情報を集めている。
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