泥まみれ最高 第3回:Moto2王者が7時間置いていかれた——ロマニアックス2026の答え合わせ
ロマニアックス2026が閉幕。レッテンビッヒラーが通算7勝で最多記録に並び、Moto2王者レミー・ガードナーはシルバー34位で完走。CFMOTOの初制覇と新ランキング始動まで、泥の現場から読む。
この記事の注目ポイント
- レッドブル・ロマニアックス2026はマニ・レッテンビッヒラーが総合22時間14分41秒で優勝し、通算7勝でグラハム・ジャービスの最多記録に並んだ。2位テオ・カバキチェフ(Sherco)とは1時間3分27秒差。
- 2021年Moto2王者でWorldSBK参戦中のレミー・ガードナーはBeta 300でシルバークラスに初挑戦し、26時間42分15秒の34位で完走。クラス優勝のサンドン・カースウェル(19時間10分12秒)から7時間以上遅れ、ロードとハードエンデューロの断絶を数字で示した。
- アドベンチャー・アルティメットではマリオ・ローマンがCFMOTO 450MTベースの車両で13時間27分30秒の初優勝。大排気量アドベンチャーで争うハードエンデューロの新枠に、中国メーカーが最初に食い込んだ格好になった。
- 2026年からロマニアックスとエルツベルクロデオ主導の「ハードエンデューロ・ワールドランキング(HEWR)」が始動。テニスのATP/WTAを手本にレースをSupreme〜Hobbyで格付けし、若手のキャリア形成を支える狙い。
前回は「土の上が主戦場になった」って書いた。じゃあその主戦場で実際に何が起きたのか、答え合わせの回だ。7月28日から8月1日、ルーマニアのシビウでレッドブル・ロマニアックスの第23回大会が終わった。今年のテーマは「UNSTOPPABLE」。57カ国から集まった連中が、700メートルに19個の障害を詰め込んだプロローグを走って、そこからカルパティア山脈を4日間。舗装路はゼロだ。最高だぜ。
ゴールドクラスはマニ・レッテンビッヒラー。プロローグは11分23秒657を出したテオ・カバキチェフに獲られて3位発進、そこからオフロードDay1を勝ち、Day2で総合19分以上に広げ、Day3は1分足らずの僅差で2位、最後のDay4を44分差でぶっちぎった。総合22時間14分41秒、2位のカバキチェフ(Sherco)に1時間3分27秒差。3位は南アフリカのジェームス・ムーアだ。これでロマニアックス通算7勝、グラハム・ジャービスの最多記録に並んで、しかも4連覇なんだよな。6月のエルツベルクロデオも獲ってる。あっちは3時間5分39秒、500人がスタートして4時間の制限内に帰ってきたのは15人だけだった。強いとかいうレベルじゃない。
で、オレが今年いちばん目で追ってたのはゴールドじゃない。シルバークラスの34位、レミー・ガードナーだ。2021年のMoto2世界チャンピオンで、いまはワールドスーパーバイクを走ってる男が、シリーズの2か月の夏休みを使って、Beta 300でロマニアックスに初エントリーした。結果は4日間を26時間42分15秒で完走。シルバーを勝った同じオーストラリアのサンドン・カースウェル(19時間10分12秒、4日間すべてでクラス最速)から、7時間以上遅れてのゴールだ。世界チャンピオンが、だぜ。
ここからはオレの意見な。この7時間差を笑うヤツは、土の上を知らない。ロードで世界を獲った人間の体力とセンスをもってしても、岩とガレと泥は別の競技だってことが、これ以上ないくらいはっきり数字に出た。舗装路の速さは、ここでは1グラムも換金できないんだよ。そしてもっと大事なのは、その差を承知で来て、リタイアせずに帰ってきたことのほうだ。ハードエンデューロは完走がまず勝ちだ。オレだって草レースで最後尾から泥まみれで帰ってきた日のほうを、表彰台の日よりよく覚えてる。
もう一個、見逃しちゃいけないのがアドベンチャー・アルティメットだ。優勝はマリオ・ローマン、車両はCFMOTO 450MTベースの改造車。総合13時間27分30秒、4日中3日を勝っての初制覇だ。ゴールドクラスに10年通っても勝てなかった男が、デカくて重いアドベンチャーバイクの「HARD」枠で初めててっぺんを獲った。しかも中国製のアドベンチャーで、だ。あの車体をカルパティアで4日走らせるクラスがちゃんと成立して、そこにCFMOTOが乗り込んできて勝った。これは来年以降じわじわ効いてくると思うぜ。
ついでに言っておくと、ロマニアックスがすごいのは上のほうだけじゃない。ゴールドの下にシルバー、ブロンズ、アイアンとクラスが降りていって、今年はブロンズをドイツのベンヤミン・リヒター、アイアンを同じくドイツのニコ・フリードマンが獲ってる。電動のeMotoクラスまであるんだ。つまり、世界のトップが命を削ってるのと同じ山で、自分の身の丈に合ったコースを4日走らせてもらえるってことだ。オレはこの構造がいちばん好きなんだよな。観客席から眺めるんじゃなくて、同じ山に自分の名前でエントリーできる。ハードエンデューロが世界中で増えてる理由の半分は、たぶんこれだぜ。
そして2026年から、ロマニアックスとエルツベルクロデオが音頭を取って「ハードエンデューロ・ワールドランキング(HEWR)」が動き出してる。テニスのATP/WTAを手本にして、レースをSupremeからHobbyまで格付けして、集まったトップ選手の顔ぶれ、国籍の多様性、観客動線、メディア露出、賞金、開催日数なんかでポイント配分を決める仕組みだ。狙いは若い選手がキャリアを積む道筋をつくること、と主催者は言ってる。要するに泥の世界が、その辺の草レースの延長から、ちゃんと登れる階段になろうとしてる。オレみたいに週末に転んでるだけの人間から、レッテンビッヒラーまで、同じ地面が続いてるってことじゃん。それが最高なんだよ。
参照・引用リンク
この記事の執筆時に引用・参照した公開情報です。
- KTM Press:Record-equalling seventh Red Bull Romaniacs win for Mani Lettenbichler
- MCNews:Lettenbichler makes history as Kerswell leads Aussie charge at Romaniacs(全クラス結果)
- Crash.net:WorldSBK's Remy Gardner completes one of world's toughest motorcycle races
- Red Bull Romaniacs公式:Kabakchiev takes the Gold, Roman storms the Adventure Ultimate(プロローグ)
- Cycle News:2026 Erzbergrodeo Hard Enduro Results
- Red Bull Romaniacs公式:Romaniacs and Erzbergrodeo present the "Hard Enduro World Ranking" for 2026



