世界カスタム便り 第4回:新人に手順書が配られた——Glemseck 101の1/8マイルが開けた入口
Glemseck 101が初参加者向けの「1/8 Mile Bible」を公開した。口伝えの手順が読める文書になる。ルールが増えると熱が薄まると思ってきた俺が、今回だけは逆だと読む理由を書く。
この記事の注目ポイント
- Glemseck 101(2026年9月4〜6日・独レオンベルク/入場無料)は初参加者向けの事前ブリーフィング「1/8 Mile Bible」を公開し、レースコントロールの仕切りとスタートゾーンの手順を文書化した。
- バッファロー・チップのMotorcycles as Artは第86回スタージス・ラリー期間中、8月8日のDavid Mann Chopperfest Sturgisで開幕し14日まで毎日15〜23時に入場無料で開催。主催は2026年を18年目と告知している。
- クラスが多いイベントほど新人には入口が見えない。手順書は敷居を上げる装置ではなく、次に来る人のために入口を広げる装置だというのが、現場を回ってきた筆者の見立てである。
9月4日から6日、ドイツ・レオンベルクの旧ゾリチュード・レース場のわきで、今年もGlemseck 101が開かれる。入場は無料、ディーラーマイルには101軒を超える出展が並び、目玉は名物の1/8マイル・スプリントだ。観客がコースの縁に立ったまま、ノックアウト方式で二台ずつ潰し合う、あの古い街の勝負。俺は毎年ここに自腹で乗り込んでいる。去年は本番の前日に、路肩でクランクケースを開けている連中の横にしゃがんで半日つぶした。あそこは走る場所であると同時に、他人の作業を覗き込める場所なんだ。ビアリッツが夏の海の匂いなら、レオンベルクは夏の終わりの排気音だ。それで今年の告知を追いかけていたら、5月12日のニュースで手が止まった。主催が「101 Race Office」を公開して、そこに「1/8 Mile Bible」という文書を置いたんだ。初参加者向けの事前ライダーブリーフィングで、常連には復習用。レースコントロールが1/8マイルをどう仕切るのか、スタートゾーンで何がどの順番で起きるのかが、読める形で書いてある。
前回、俺はWalzWerkのロイヤルエンフィールドが36台即完売した話を書いた。TÜV認証と2年保証が付いた瞬間、一点ものは商品になる、と。今度は同じことが、モノではなくイベントの側で起きている。これまで工房の隅やパドックの脇で、先に走った奴から次の奴へ、口から口へ渡していた手順が、誰でも読める文書になった。正直に言うと、長く現場にいると、この手の文書化には反射的に身構える癖がつくんだよ。ルールが増えるほど、あの雑で無許可な熱が薄まっていく。駐車場に区画線が引かれ、受付にリストバンドが並び、気づけば見たこともない警備員が「そこは立ち入り禁止です」と言い出す。書類が増えた場所から順につまらなくなる。そう思ってきた側の人間だ、俺は。実際、安全基準と保険と誓約書が増えていくのと同じ速さで、静かに小さくなっていった祭りを、この20年でいくつも見送ってきた。だから最初にあの文書を開いたときも、身構えたまま読み始めた。
ただ、読み終わって思ったのは逆のことだった。ここからは事実じゃなく、俺の読みだ。Glemseckにはクラスが山ほどある。101 Sprint International、101 Big Coffee、カフェレーサー、クラシックレーサー。そこにRocket Race ClubやStarrWars、スイスのMofa Kultといったゲストスプリントまで並ぶ。クラスの数だけ入口がある、ということは、初めて来た奴には入口が多すぎて見えない、ということでもあるんだ。どこに車両を持っていけばいいのか、誰が車体を見るのか、スタートの合図は誰が出すのか。それを全部、知り合いのいる奴だけが知っている状態が、ずっと続いてきた。誰に何を聞けばいいのかわからないまま、トレーラーの横で半日立ち尽くす奴を、俺は何人も見てきた。あいつらに足りなかったのは度胸じゃない。最初の10分の説明だ。その10分を、これまでは運よく親切な常連に当たった奴だけがもらえていた。運の要素を減らすことは、シーンを薄くすることじゃないと思う。あの文書は、敷居を上げるために書かれていない。下げるために書かれている。
同じ8月、海の向こうでも扉の話があった。第86回スタージス・ラリーの週、バッファロー・チップのMotorcycles as Artは、8月8日のDavid Mann Chopperfest Sturgisで幕を開け、14日まで毎日15時から23時まで開いていた。デヴィッド・マンの絵を旗印にした展示に、入場料は一切かからない。チョッパーフェストという名前が示すとおり、あの展示の背骨にあるのは、雑誌の隅に描かれた一枚の絵から広がっていった文化だ。主催は2026年の開催を18年目と告知している。18年続けて、夜11時まで、金を取らずに扉を開けておく。それがどれだけ面倒で、どれだけ金のかかることか、一度でも小屋を借りてイベントをやった奴ならわかるはずだ。カスタムが商品になっていく話の裏側で、扉を開けたままにしておくコストを、誰かが黙って払い続けている。手順書も、無料の入場も、やっていることは同じじゃないか。次に来る奴のために、入口を広げているんだ。俺たちが現場で浴びてきた熱は、たまたまそこに居合わせた人間だけの持ち物じゃない。9月、俺はまたレオンベルクに立つ。あの文書を読んできた新人が、スタートゾーンでどんな顔をしているか。それを見に行く。現場に行けばわかる。
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