日本ワインディング紀行 第5回:十月十四日正午に閉じる山——王滝村、標高2,180メートルの終点
御嶽山の王滝口が歩けるのは十月十四日の正午まで。その先へ続く御岳スカイラインは十一月五日に閉じます。標高2,180メートルの田の原まで、終わる日付から逆算して走る話です。
この記事の注目ポイント
- 御岳スカイライン(王滝村道41号線・八海山〜田の原)は令和7年11月5日から冬季通行止めで、11月5日以前に降雪があれば繰り上がる。解除予定は令和8年5月2日。終点は御嶽山7合目・標高2,180メートルの田の原天然公園。
- 御嶽山の王滝口が通行できるのは令和8年7月10日9時から10月14日正午まで。区間は田の原駐車場〜王滝頂上〜剣ヶ峰に限られ、9合目から奥の院方面とお鉢めぐり登山道は今年度も入山規制が続く。
- 噴火警戒レベルは令和7年5月20日にレベル1へ下がったが、入山規制は災害対策基本法に基づいて別途続いている。気象庁の警戒レベルと、実際に入れる範囲は一致しない。
前回は九月十八日に開く峠の話を書きました。天生峠の白川村側が、その日にようやく通行止め解除の予定になっているという、始まる日付の話ですね。あれから何人かの方に「開く日を待つのも旅のうちですね」と言っていただいて、なるほどと思ったんですよ。ただ、地図を広げていると、当たり前ですが終わる日付のほうが数としては多い。今年の秋、僕がいちばん気にしている終わりは二つあります。十月十四日の正午と、十一月五日。場所はどちらも同じ、長野県木曽郡王滝村です。御嶽山の南西の麓にある村ですね。同じ土地に、閉まる時刻の違う二つの入口がある。こういう場所の走り方は、少し順番を考えないといけません。
まず道のほうから。王滝村の役場が出している告知はごく短いものです。村道41号線、区間は八海山から田の原まで。令和七年十一月五日(水)から令和八年五月一日(金)まで冬季通行止めで、五月二日(土)から解除。そして一行、こう添えてあります。「十一月五日以前に降雪があった場合は、通行止めが早まります」。つまり十一月五日というのは約束ではなく、いちばん遅い場合の日付なんですよ。この村道41号線が、通称・御岳スカイラインです。終点は御嶽山七合目、標高2,180メートルの田の原天然公園。木曽おんたけサイクリングワールドがヒルクライムのコースとして紹介している資料によれば、獲得標高は1,530メートル、最高勾配は20.9パーセント、登坂だけで二十キロを超えます。自転車で登る人がいる道を、僕らはエンジンで上がらせてもらうわけですね。告知に書かれている区間は八海山から田の原までひと続きで、途中で分岐する迂回路が案内されているわけではありません。つまりゲートが下りた時点で、田の原へ上がる手段はなくなります。前回の天生峠は片側だけが開いているという状態でしたが、こちらは開くか閉じるかの二択なんですよ。だから走る前に村の告知を一度見ておくという面倒な手順を、僕はここでは省かないことにしています。
もう一つの日付、十月十四日正午のほうは道ではなく山の話です。王滝村の発表によれば、御嶽山の王滝口が通行できるのは令和八年七月十日の午前九時から、十月十四日の正午まで。歩ける区間も限定されていて、田の原駐車場から王滝頂上を経て剣ヶ峰まで。九合目から奥の院へ向かう道と、お鉢めぐりの登山道は、今年度も引き続き入山規制です。噴火警戒レベルは令和七年五月二十日にレベル1、つまり「活火山であることに留意」まで下がっていますが、村は災害対策基本法に基づいて規制を続けている。ここは分けて考えたいところです。レベル1というのは気象庁の警戒区分の話であって、実際にどこまで入れるかは自治体の判断で決まる。この二つを混ぜて読むと、行ってから引き返すことになります。バイクで田の原まで上がるだけなら登山の期限とは直接関係ありませんが、駐車場も山小屋も登山シーズンに合わせて動いている。正午で閉まる山の下を、道だけが十一月まで開いている。そういう時間差のある場所なんですよ。実務的なことをひとつ。田の原には駐車場があり、王滝口の登山道はそこから始まります。十月十四日の正午を過ぎれば、上を歩く人はいなくなる。それでも十一月五日までは、道そのものは開いている可能性が高いわけです。人の少なくなった七合目まで上がって、標高2,180メートルの空気だけ吸って降りてくる。そういう走り方ができる期間が、日付を並べて数えると三週間ほどある計算になります。
では上がって降りて終わりかというと、この村には泊まる理由もできました。王滝村3162番地の「ONTAKE EXPLORER PARK」、標高はおよそ1,680メートルです。この七月二十五日と二十六日、カワサキとクシタニがここで五十名限定のキャンプライドを開いています。KLX230 SやKLX230 SHERPAでのオフロード試乗、星空観察会、早朝の雲海ツーリング。告知を読んでいるだけで羨ましくなる中身でした。メーカーが場所を選ぶときには理由があって、標高1,680メートルというのは、八月でも夜には薄手のダウンが欲しくなる高さです。僕はこういう「上へ逃げる」宿の取り方をずいぶんしてきましたが、王滝はその中でも間口が広いほうだと思いますね。道の駅でコーヒーを飲みながら地図を広げて、手帳に二つ日付を書き写してください。十月十四日正午と、十一月五日。そのあいだに残っている週末が、今年この村を走れる回数です。次はどこを走ろうか。僕はもう、決めてしまいました。
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