アジア二輪経済COLUMN — 2026.08.06
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アジア二輪経済 第3回:Bajajは国内より輸出が多い——インドは「市場」から「輸出基地」へ

SIGNATURE COLUMN — アジア二輪経済BY SURESH KAWACHI2026.08.06
アジア二輪経済 第3回:Bajajは国内より輸出が多い——インドは「市場」から「輸出基地」へ
PHOTOMOTOBOOK編集部↗ 原文を見る

2026年7月のインド二輪、国内首位はHero。だが輸出を足すとTVSが逆転し、Bajajは国内165,747台に対し輸出222,972台。インドが「市場」から「輸出基地」へ変わる断面を数字で読む。

この記事の注目ポイント

  • 2026年7月のインド二輪主要6社の販売は輸出を含め合計2,329,424台で前年同月比22.48%増。国内首位はHero MotoCorpの501,403台(同21.58%増)。
  • 輸出を含めた総販売台数ではTVSが603,138台(同37.45%増)で首位となり、Honda 542,934台、Hero 533,416台と国内販売の順位が入れ替わる。
  • Bajaj Autoは国内165,747台に対し輸出222,972台と、輸出が国内を上回った。仕向け先はMotilal Oswalの集計で中南米が約35%、アフリカが約30%。
  • Royal Enfieldは国内105,317台(同38.11%増)と好調な一方、7月の輸出は12,915台にとどまり、6月の輸出は前年同月比12%減だった。

第1回でインドが世界最大の二輪市場になったという「量」の話を、第2回でCFMotoのリッタークラス進出という「質」の話をしました。第3回は「出口」の話です。2026年7月のインド二輪各社の販売台数が出そろいましたが、国内の順位表だけを眺めていると、いま起きていることの半分を見落とします。

まず国内販売から。7月はHero MotoCorpが501,403台(前年同月比21.58%増)で首位、Hondaが476,436台、TVSが437,394台(同41.68%増)と続きました。Bajaj Autoは165,747台、Suzukiは123,216台で月間として過去最高、Royal Enfieldは105,317台(同38.11%増)です。主要6社の合計は輸出を含めて2,329,424台、前年同月比22.48%増。国内市場は堅調そのものだと言っていいでしょう。

ところが、輸出を足した総台数で並べ替えると順位が変わります。首位はTVSの603,138台(同37.45%増)で、同社の月間最高記録。次いでHondaが542,934台、Heroが533,416台です。国内で1位だったHeroが、合計では3位に下がる。数字が示すのは、インドの二輪メーカーを国内市場だけで測る時代が終わりつつあるということです。

最も極端なのがBajaj Autoです。7月の国内165,747台に対し、輸出は222,972台。国内より海外のほうが多く売れています。仕向け先は偏っていて、Motilal Oswalの集計では中南米が約35%、アフリカが約30%。TVSの輸出も165,744台と大きく、これはBajajの国内販売とほぼ同じ規模です。市場という視点では、両社はもはやインドの会社であると同時に、中南米とアフリカの会社でもあります。

ここで一つ、数字を扱う上での注意を挟ませてください。各社の発表は集計の範囲が揃っていません。Bajajの台数にはChetakという電動スクーターとKTM・Triumphのモデルが含まれる一方、インドのEV市場で最大手にあたるTVSは電動スクーターをこの数字に含めていません。つまり単純な横比較は、それ自体が一つの解釈です。市場という視点では、順位そのものよりも、各社が「どこで売っているか」という構成のほうが読む価値があります。

この輸出の伸びは、バイクの出来とはあまり関係のない理由で起きています。アフリカでは長く続いたドル不足が和らぎ、現地の輸入業者が発注を再開できるようになりました。中南米では販売金融が回復し、Bajajはブラジルでの現地組立に投資しています。西アジア発の海運の混乱が収まったことも効きました。6月の輸出は前年同月比でBajajが49%増、TVSが48%増、HMSIが47%増、Heroが33%増、Suzukiが12%増。一方でRoyal Enfieldだけは12%減でした。

単月の振れではありません。4〜6月の第1四半期で見ると、輸出の伸び率はHero MotoCorpが63.3%増、Bajajが52%増。四半期を通して同じ方向に動いています。国内では、祭礼シーズンを控えてエンジン車の販売が各社そろって小幅に持ち直しました。輸出の追い風と国内の底堅さが同時に来ている、というのが7月の実像です。Hondaの輸出66,498台、Heroの32,013台、Suzukiの19,769台という数字を並べてみると、BajajとTVSの突出ぶりがより際立ちます。

ここからは私の見方です。インドはもう「世界最大の二輪市場」という一語では足りません。新興国向け二輪の製造拠点であり、輸出基地でもある。同じ「好調」でも中身は二種類あって、Royal Enfieldのように国内需要で伸びる会社と、BajajやTVSのように外貨事情と海運に業績を左右される会社とでは、来年の景色がまるで違うでしょう。日本の読者にとっての意味も、そこにあります。これから日本市場に入ってくるアジア製の二輪は、日本向けに設計されたものではなく、中南米やアフリカの道で先に鍛えられた製品だということです。

為替と外貨事情という、走りとは無縁の要素が販売台数を動かしている。裏を返せば、それらが逆に振れたときには同じ勢いで数字が落ちるということでもあります。だからこそ、この連載では来月以降も国内の順位表ではなく、輸出の欄から先に見ていきます。

参照・引用リンク

この記事の執筆時に引用・参照した公開情報です。

  1. Rushlane:Two Wheeler Sales July 2026 – Hero, Honda, TVS, Bajaj, Suzuki, Royal Enfield
  2. Autocar India:Bike and scooter sales see an uptick in July 2026
  3. Business Standard:Latin America, Africa power strong Q1 recovery in two-wheeler exports
河内 スレシュ
アジア・グローバル担当
河内 スレシュ
ムンバイで育ち、バイクは生活の一部だった。今は東京にいるが、インドや東南アジアのバイク市場が世界の中心になっていくのを肌で感じている。その変化をいち早く日本語で伝えることに、使命を感じている。英語・日本語・ヒンディー語で情報を集めている。
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