EVは買いかCOLUMN — 2026.08.05
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EVは買いか 第3回:上限48万円は、電動を安くしていない

SIGNATURE COLUMN — EVは買いかBY AO AZUMA2026.08.05
EVは買いか 第3回:上限48万円は、電動を安くしていない
PHOTOMOTOBOOK編集部↗ 原文を見る

東京都のEVバイク補助金は上限48万円。だが算定式を読むと、この制度が目指しているのは電動を安くすることではなく、ガソリン車との価格差を消すことだと分かる。買い時の条件を数字で整理する。

この記事の注目ポイント

  • 東京都の2026年度EVバイク購入補助金は、補助額が「同種同格のガソリン車両との価格差から国の補助金を差し引いた額(上限48万円)」と定義されており、ガソリン車より安くするのではなく価格差を消す設計になっている。
  • 都が示す例では、84万8000円のバッテリー交換式の原付三輪が国と都の補助を合わせて50万6000円になる。この金額は同等のガソリン車の価格であり、到達点は「同額」であって「割安」ではない。
  • 補助を受けられるのは都内に住民票がある個人か都内に事業所を持つ事業者で、車両は初度登録から1年以内かつ国のCEV補助金の対象車種に限られる。対象一覧にない車種は国・都ともに補助額ゼロで、申請期限は2027年3月31日17時。
  • 予備バッテリー付き車両を補助で購入した場合、初度登録から3年間で公社が定める使用最低量以上を走行する必要がある。リチウムイオン電池は満充電・高温で放置すると劣化が進むため、乗らずに寝かせる買い方は制度上も技術上も適さない。

前回は固定電池という現実解の話をした。ホンダUC3を例に、交換式ではなく積みっぱなしの電池を選んだ設計が、数字の上ではむしろ理にかなっていることを書いた。今回は車体ではなく値札の話をする。二〇二六年四月三十日、東京都のEVバイク購入補助金が申請の受付を開始した。上限は四十八万円。原付や小型二輪にとっては、車両価格に匹敵しかねない大きな数字だ。制度としてかなり踏み込んだ額と言っていい。ただ、この数字の読み方を取り違えている人が多いように感じている。踏み込んだ額であればこそ、それが何に対して払われている金なのかを正確に見ておきたい。

重要なのは金額そのものではなく、算定式のほうだ。東京都の発表によれば、補助額は「同種同格のガソリン車両との価格差から国の補助金を差し引いた額」であり、その上限が四十八万円である。式の形をそのまま読めば、これは電動車をガソリン車より安くするための制度ではない。ガソリン車と同じ土俵に立たせるための制度だ。都が示している例が分かりやすい。八十四万八千円の第一種原動機付自転車、つまりバッテリー交換式の原付三輪が、国と都の補助を合わせて五十万六千円になる。この五十万六千円という数字は、同等のガソリン車の価格だ。到達点は「同額」であって「割安」ではない。ここを混同すると、制度が終わったときに何が起きるかを見誤ることになる。

条件も丁寧に読んでおきたい。対象になるのは、都内に住民票がある個人か、都内に事務所・事業所を有する法人・個人事業主。車両は都内に定置場または使用の本拠地があり、初度登録日から申請受付日までが一年以内で、なおかつ初度登録日の時点で経済産業省のCEV補助金の対象車種であることが求められる。国の補助対象車両一覧は令和八年四月一日以降の登録分が公開されており、都の助成対象車と金額の一覧も令和八年七月八日現在版が出ている。裏を返せば、一覧に載っていない車種は国も都もゼロだ。安価な輸入電動スクーターを個人で買ってきて後から申請する、という筋道は基本的に通らない。申請の締切は令和九年三月三十一日で、オンラインも郵送も同日十七時までとされている。充電側にも「電動バイク充電環境促進事業」という別枠があり、専用充電器の購入費やバッテリーシェアリングサービスの利用経費が対象になるが、これは車両側の事業と併せて申請する者に限られる。単独では使えない設計だ。ここまで並べて分かるのは、これが東京都という一自治体の政策として設計されているという当たり前の事実である。全国の話ではないし、来年度も同じ形で続く保証もない。制度の地理的な範囲と時間的な範囲は、車両のスペック以上に購入の判断を左右すると考えている。

もうひとつ、技術的におもしろい条件がある。予備バッテリー付きの車両を補助で購入した場合、初度登録から三年間で公社が定める使用最低量以上を走ることが求められている。制度としては公金の使途に対する当然の縛りだが、バッテリーの観点では別の意味を持つ。リチウムイオン電池は、使わなくても時間とともに劣化する。特に満充電のまま高温で放置する状態が最も悪い。つまり「補助が出るうちに買って、あまり乗らずに置いておく」という買い方は、制度の趣旨にも電池の物理にも反している。走らせる前提のない人には、そもそも向いていない制度だと言える。逆に言えば、走行距離が読める使い方——通勤、配達、営業の巡回——であれば、この条件は縛りではなく前提にすぎない。制度を作った側は、そういう乗り方を想定しているのだろう。

私の結論はこうだ。都内に生活か事業の拠点があり、対象一覧に載っている車種で、通勤や配達のように日常的に走る距離が確実にあるなら、二〇二六年度は買い時と言っていい。初期費用の差が消えるなら、判断の軸は走行コストと維持の手間の比較に移る。そこは電動が有利になりやすい領域だ。逆に、都外に住んでいる、リストにない車種が欲しい、週末に少し乗るだけ——このいずれかに当てはまるなら、補助金は判断材料にならないと考えている。感情ではなく数字で言えば、今回の制度が示しているのは「電動が安くなった」ではなく「価格差が公費で肩代わりされている」である。両者はまるで違う。前者なら市場が育ったことになるが、後者は予算がついている間だけの状態だ。来年度以降の額がどうなるかを見るとき、この違いが効いてくるだろう。買う側としては、補助を前提に判断するのか、補助がなくても成立する使い方があるのか、そこを自分で分けて考えておくのが健全なのは確かだ。もう一点だけ付け加えておく。補助金は購入時の一回きりだが、電池の交換費用は数年後にやってくる。総額で比べるつもりなら、そこまで含めた表を自分で作るべきだ。私はいつもそうしている。

参照・引用リンク

この記事の執筆時に引用・参照した公開情報です。

  1. 東京都:EVバイク車両購入補助金 4月30日から申請受付開始(報道発表)
  2. クール・ネット東京:電動バイクの普及促進事業
  3. クール・ネット東京:電動バイク充電環境促進事業
  4. 次世代自動車振興センター:CEV補助金 補助対象車両一覧
  5. EV CAFE:東京都の2026年度EVバイク補助金は上限48万円。4月30日から申請受付
東 蒼
EVスペシャリスト
東 蒼
電気工学を学んで、パワートレイン開発の仕事をして、電動バイクに乗り始めた。EVバイクに対する誤解が多すぎると感じて、技術的な裏付けのある記事を書くようになった。感情ではなく、データで語りたい。それが私のスタイルだ。
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