ギア・ラボ 第5回:297グラムは、パッドを入れ替えるだけで消える——いま着ているジャケットの中身の話
KLIMが新プロテクター一式Rogueを発売した。レベル2で一式297グラム減、通気は最大725%改善。エアバッグを見積もる前に、いま着ているジャケットの中身を測ってほしい理由を書く。
この記事の注目ポイント
- KLIMのRogueは膝・肘・肩・腰・背中・胸で15種類。厚みはレベル1が7.5ミリ、レベル2とEXPが11ミリで、ジャケットとパンツの一式ではレベル2で297グラム、レベル1で133グラム、EXPで243グラム軽くなる。
- EN 1621-1のレベル2は伝達力の平均20kN未満・単発30kN以下(レベル1は平均35kN未満・単発50kN以下)。CE試験の四条件のうち必須は二条件で、KLIMはRogueが常温・湿潤・低温・高温の四つすべてを通したとしている。
- EXPは標準的なCEサイズのパッドより平均44%広く左右非対称のため、互換は過去のBadlands ProとBadlands Pro A3系に限られる。標準Rogueは過去世代のKLIMウェア30モデル以上に対応する。
前回は、エアバッグベストの値札に書いていない維持費の話をしました。買った後に始まる数字の回です。今回はその手前、いま着ているジャケットの中身の話をしたい。KLIMがRogueという新しいプロテクター一式を出しました。膝、肘、肩、腰、背中、胸で15種類。厚みはレベル1が7.5ミリ、レベル2とレベル2 EXPが11ミリです。ただ、アキラが面白いと思ったのは厚みより重さのほうなんですよね。ジャケットとパンツを合わせた一式で、レベル1が133グラム、レベル2が297グラム、EXPが243グラム軽くなるとKLIMは書いています。通気は当たる場所によって175%から725%改善したという。Motorcycle.comの記事には、レベル2の手足用パッドが従来のレベル1と同じ薄さになった、という説明も出ています。つまり等級をレベル2に上げたまま300グラム近く削れる余地が、これまでのパッドには残っていたということなんだ。標準のRogueは2026年の新作・改良ウェアに最初から入っていて、今春から単体でも買えるようになりました。
ここで等級の読み方を確認しておきます。EN 1621-1のレベル1は、体に伝わる力の平均が35kN未満で、単発でも50kNを超えないこと。レベル2は平均20kN未満、単発30kN以下。数字が小さいほど、体に届く力が少ないという意味です。ただアキラが毎回しつこく言いたいのは、その試験がどんな条件でやられたか、なんですよね。CEの試験条件は常温、湿潤、低温、高温の四つ。KLIMの説明では常温は23度・湿度50%で48時間以上、湿潤は70度を超える水に72時間、低温はマイナス10度で24時間、高温は40度で24時間置いてから叩く。このうち必須は二条件で、Rogueは四条件すべてを通したとメーカーは言っています。冬の朝に硬くなるパッド、真夏の渋滞で柔らかくなりすぎるパッド——低温と高温は、カタログの飾りじゃなくて、あなたが実際に走っている条件だと思う。
買う前に測ってほしいのはポケットのほうです。EXPは標準的なCEサイズのパッドより平均44%広い、とKLIMは説明しています。しかも左右非対称で、右膝と左膝、右肩と左肩がそれぞれ違う形をしている。肘なら肘、腰なら腰で、当たる骨の位置に合わせて別々の型を起こしたということです。この考え方自体はアキラも支持します。人間の膝は左右対称に転ばないので、同じ形のパッドを二枚入れるほうがむしろ不自然なんですよね。カバー範囲が広いのは良いことなんですが、広いということは、ジャケットのポケットに収まらない可能性が上がるということでもあるんですよね。互換性の但し書きもそこに出ています。標準のRogueは過去世代のKLIMウェア30モデル以上に入るのに、EXPレベル2はBadlands ProとBadlands Pro A3系に限られる。他社のジャケットに移植するつもりなら、まずポケットの縦横をメジャーで実測してから買うのが正解です。それから、パッドが当たる位置は体で変わる。胸に膨らみのある体、肩幅の広い体、腹まわりに厚みのある体——同じMサイズでも、肘パッドが肘頭に乗る位置は数センチずれます。ギアに性別は関係ない。フィットするかどうかだけ、なんですよね。
結論はこうです。エアバッグの見積もりを立てる前に、いま着ているジャケットのパッドを全部抜いて、机に並べてほしい。表にレベル1と書いてあるか、レベル2か、それとも何も書いていないただのスポンジなのか。厚みを測って、重さを量って、ポケットに戻したら腕を上げてみる。前傾姿勢を作ってみる。肘パッドがずり落ちるなら、それは等級以前の問題なんだ。アキラが何年も着ていたジャケットも、抜いてみたら等級の刻印がどこにも見当たらないパッドが背中に入っていました。買ったときは、そこまで見ていなかったんですよね。プロテクターの入れ替えは、装備を丸ごと買い替えずに防御を一段上げられる、いちばん安い選択肢だと思う。ただし、パッドを替えても外装の生地は替わりません。路面との摩擦に耐えるのは生地の仕事で、衝撃を受け止めるのがパッドの仕事だから、そこは分けて考えてほしい。Rogueは今春から出回っています。同じことを他社もやってくるはずです。次にジャケットを買うとき、値札の隣に「パッドは何ミリで、四条件のうちいくつ通っているか」が並ぶ日が来たら、アキラは嬉しい。
参照・引用リンク
この記事の執筆時に引用・参照した公開情報です。
- KLIM公式:Rogue Armor(レベル別の厚み・重量削減・通気・四条件・互換表)
- RideApart:KLIM's Got All-New Motorcycle Armor, A Carbon Helmet, and A Bunch of Updates(2026年)
- Motorcycle.com:Klim Announces Lighter, Thinner, and Softer Rogue Armor System(15種類・今春発売・必須二条件を超えて四条件通過)
- SAS-TEC:All joint protectors certified according to EN 1621-1:2012(レベル1・2の伝達力しきい値)





