スペック偏愛日記 Vol.5:Mは馬力じゃない——BMWが1300GSから引き算しはじめた
EICMA 2026向けBMWリーク5台。M 1300 GSは145馬力据え置きでレーダーもタンク容量も削る引き算、M 1000 RSは999cc直4で200馬力超の足し算。同じMが逆を向いている。
この記事の注目ポイント
- M 1300 GSの試作車はフロント21/リア18インチのスポークホイールにメッツラーKaroo、ストローク延長とスイングアーム支持の補強を確認。エンジンは145馬力のR 1300 GS用ボクサーが据え置きの見立て。
- M 1300 GSの変更点は追加より削減が中心で、前後レーダーの撤去、アドベンチャーではなく標準車の小容量タンク、チタンなどによる軽量化が挙がっている。
- M 1000 RSは米EPAとCARBが2027年モデルとして認証済み。999cc直4で米国仕様は205馬力/13,000rpm、欧州報道では218馬力とされ、M 1000 RRの428ポンドより重くなると推定されている。
- リークの確度には差があり、M 1000 RSは認証書類、S 1000 RRはインドの意匠特許(215馬力・2027年5月生産開始は噂)、M 1300 GSとF 600 GSはスパイ写真のみが根拠。
前回は「7」という数字が排気量じゃなかった、という話をした。今回は数字ではなく、文字の話をしたい。BMWがEICMA 2026に向けて用意しているとされる5台のリーク——M 1300 GS、M 1000 RS、S 1000 RR、F 600 GS、そしてR 1300 GSの小改良——が欧州メディアに出回っているんだけど、スペックシートを並べていて僕が引っかかったのは、この中に「M」が二つ入っていることなんだ。BMWにとってMはモータースポーツの記号で、普通に考えれば「馬力が上がる」の合図だよね。ところが今回の二つのMは、まったく違う方向を向いている。ここがたまらない。
まずM 1300 GS。ミュンヘンの開発拠点付近で覆いを被せた試作車が撮られていて、フロント21インチ・リア18インチのスポークホイールにメッツラーKarooを履いている。サスペンションのストロークは延ばされ、ファイナルドライブ側のスイングアーム支持は補強・改修されているという。で、肝心のエンジンは1300ccの水冷ボクサーがほぼ据え置きの見立てだ。ベースのR 1300 GSは145馬力/7,750rpm、トルクは110lb-ft(約149Nm)/6,500rpm。Mだからといって、ここが跳ね上がる話にはなっていない。代わりに何をしているかというと、引き算なんだよ。タンクはアドベンチャー用の大容量ではなく標準車の小さいほう。前後のレーダーユニットは外される。排気系を中心にチタンなどの高価な素材で質量を削る。ブレーキはあの青いキャリパーのMブレーキ。旧モデルと比べると、追加された装備より外された装備のほうが目立つ一台になりそうなんだ。しかも価格は標準車より8,000〜12,000ドル高くなるという見立てが出ている。レーダーを外して値段が上がるバイク、というのは言葉にすると相当おかしいんだけど、Mシリーズの過去の値付けを考えれば筋は通っている。発表は2027年シーズン前、早ければ2026年秋という話だ。
一方のM 1000 RSは、同じMでも足し算側にいる。米国のEPAとCARBが2027年モデルとして独立に認証を出していて、これは噂ではなく書類だ。エンジンは999ccの直列4気筒。CARBの排出データが2026年型M 1000 RRと同一なので、米国仕様は205馬力/13,000rpm、83lb-ft/11,100rpmと同値になるという読みが出ている。ところが欧州メディアの見立ては218馬力で、現行から5〜6馬力の上積みという書き方だ。慣性重量のデータからは、M 1000 RRの428ポンド(約194kg)に対して最大10kg近く重くなるとも推定されている。RSはReise und Sport、つまり旅とスポーツ。スポーツツアラーに200馬力超を積むという、そもそも用途が怪しい方向に全力で振っているわけで、僕は正直こっちのほうが心拍数が上がる。M 1000 RRとM 1000 XRの間を埋める位置づけで、空力的な防風性能を上げてくるという話も出ている。片方は装備を捨てて土へ、もう片方は装備を積んだまま速度へ。同じ二文字が真逆に使われているんだ。
もうひとつ書いておきたいのは、リークにも証拠の等級がある、ということだ。M 1000 RSはEPA/CARBの認証書類で、これは最上級。S 1000 RRはインドで出願された意匠特許とヴィラ・デステで見せたコンセプトRRの意匠が近い、という中位の根拠で、215馬力・2027年5月生産開始という数字はまだ噂の域にある。M 1300 GSとF 600 GS(590〜600ccの2気筒で65〜70馬力と推定、21/18インチ。テネレ700やトランザルプの真っ向勝負に来る一台だ)はスパイ写真だけだ。5台目のR 1300 GSに至っては、エンジンは無変更で新色を含む意匠のリフレッシュにとどまるという見立てで、これはもう「リーク」と呼ぶほどの中身でもない。同じ「リーク」の一語で並べると等価に見えるけれど、確度はまるで違う。スペック偏愛者としては、この差を潰さずに読みたい。そのうえで言うと、今回いちばん面白いのはM 1300 GSのほうだと思う。Mが「速い」の記号から「目的のために何を捨てたか」の記号に変わりつつあるなら、それはBMWのバッジの意味そのものが書き換わるということだ。145馬力のままダートに振り切ったMを、あの会社が本当に出すのかどうか。答え合わせは秋のミラノでいい。
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