アメリカン・ロード 第3回:足すのをやめたハーレー——Deadwoodが2,000ドル安い理由
スタージス開幕日に公開される新型Deadwoodは、Heritage Classicから装備を外して2,000ドル安い17,999ドル。ハーレーが「足す」から「外す」へ舵を切った意味を読む。
この記事の注目ポイント
- 2026年型Harley-Davidson Deadwoodは17,999ドル。ベースのHeritage Classic(19,999ドル)からサドルバッグとツーリング装備を外し、2,000ドル安く設定された。
- エンジンはMilwaukee-Eight 117(1,923cc)で98馬力/4,600rpm・120lb-ft。車重は686ポンド(約311kg)あり、「軽いボバー」という言葉の印象とは異なる。
- 同時期のSuper Glideは15,999ドルで、ベースのStreet Bob(14,999ドル)との差は1,000ドル。2,500ドル以上を上乗せしていた従来のIcon Collectionから値付けの発想が変わった。
- Deadwoodの販売は米国とカナダのみで、日本には導入されない。一般公開は8月7日、第86回スタージス・モーターサイクル・ラリー(8月7〜16日)の開幕日。
第2回で、ハーレーが2026年モデルを13機種も一気に並べた話を書いた。あれは「物量」の話だった。今回はその逆をやる。足すんじゃなくて、外す話だ。8月7日、サウスダコタのスタージスで第86回のラリーが開幕する(会期は8月16日まで)。その初日に一般公開されるのが、2026年型の「Deadwood」なんだよ。
まず事実を並べるぜ。DeadwoodはSoftailの新顔で、心臓はMilwaukee-Eight 117——1,923ccのビッグツインだ。出力は98馬力(4,600rpm)、トルクは120lb-ft。車重は686ポンド、キロに直せば約311kg。価格は17,999ドルで、販売は米国とカナダのみ。日本には入ってこない。そしてここが肝心なんだが、ベースになっているのはHeritage Classicで、そっちの価格は19,999ドルだ。サドルバッグとツーリング装備を落とし、スクリーンを短くし、リアの足を1インチ削って、2,000ドル安い。足して高くしたんじゃなく、外して安くしてある。
もっとも、外したのは荷物と快適装備であって、中身じゃない。セレクタブルライドモード(Road/Sport/Rain)、コーナリングABS、コーナリングトラクションコントロール、ドラグトルクスリップコントロール、タイヤ空気圧監視まで載ってる。5インチのアナログスピードメーターにLCDを組み合わせ、7インチのハロー式LEDヘッドライト、USB-C、ヒーテッドギア用のコネクタが2口。足まわりは49mmのフォークとプリロード調整式のモノショックで、リアのストロークは3.4インチ。チューブレスのスポークホイールに、2-into-1のエキゾースト。見た目は戦後で、中身は2026年なんだよ。
ボバーってのは、元々そういう乗り物だ。戦後、帰ってきた兵隊たちがフェンダーを切り、要らない鉄をむしり取って、軽く、速く、自分のものにした。ブラックヒルズの古い鉱山町の名前を車名に持ってきたのも、ラリーの戦後史に引っかけてるんだろう。ただし、工場で作られたボバーってのは言葉としては矛盾してる。誰かに外してもらった「外した状態」を、金を払って買うわけだからな。オレはそこに、ずっと引っかかってきた。
とはいえ、今回の値付けは今までと明らかに違う。同じ流れで出たSuper Glideは15,999ドル。ベースのStreet Bobが14,999ドルだから、差はたった1,000ドルさ。かつてのIcon Collectionが2,500ドル以上の上乗せだったことを思えば、発想がひっくり返ってる。CEOのArtie Starrsはこれらを「ブランクキャンバス」と呼んでいる。素の状態で安く出して、あとは持ち主とディーラーが好きに描け、という設計だ。パーツとアクセサリーで稼ぐという商売の筋も、はっきり見えるだろ。
ここからはオレの見方だ。686ポンドは、正直、軽くない。戦後の連中がやった引き算とは意味が違うし、数字だけ見れば「黒く塗ったヘリテージ」だと言われても反論しづらいさ。だがオークランドのショップで見てきた光景を思い出すと、話は別になる。あの街で一番いじられていたのは、最初から作り込まれた高い車両じゃない。素っ気ない、安いやつだった。余白がある車両にしか、人は手を入れないんだよ。
舞台の選び方も、うまいと言うしかない。スタージスにはデモライドの拠点が5か所立ち、8月11日には軍人と消防・救急への感謝デーが組まれ、Deadwoodの街のアウトロー・スクエアではライブとチャリティランが動く。そこで真っ黒な新型を囲ませる。ちなみに、Starrsは「Super Glideの売れ行きは期待を超えた」と言っているが、Motorcycle.comの読者コメントはもっと冷ややかだ。会社の手応えと、乗り手の反応は、まだ一致していない。オレはこの温度差を、けなす材料じゃなく、面白がる材料だと思ってるぜ。
日本で買えないのは残念だ。米加限定という線引きには、北米を別勘定で見ているこの会社の判断が出ている。それでも、この話は日本のライダーにも関係があるぜ。ハーレーが「足して高くする」から「外して安くする」へ舵を切ったなら、その考え方はいずれ他の市場のモデルにも回ってくるからだ。まずは今週、スタージスで実車を囲んだ連中がどんな顔をするか。向こうのシーンだと、答えはだいたい駐車場に出る。
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