泥まみれ最高COLUMN — 2026.08.12
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泥まみれ最高 第4回:スウェーデンのゲレンデを登る三日間——世界選手権が北欧に来る

SIGNATURE COLUMN — 泥まみれ最高BY CHAZ MIKAMI2026.08.12
泥まみれ最高 第4回:スウェーデンのゲレンデを登る三日間——世界選手権が北欧に来る
PHOTOMOTOBOOK編集部↗ 原文を見る

FIMハードエンデューロ世界選手権が8月20〜22日、スウェーデンで史上初開催。スキー場が舞台の新戦Forza Orzaと、レッテンビヒラー13点リードのシーズンを三神チャズが読む。

この記事の注目ポイント

  • FIMハードエンデューロ世界選手権が2026年8月20〜22日、スウェーデンのオルサ・グレンクリットで史上初開催される。会場はスキーリゾートで、急斜面・森・ゲレンデ・岩場を組み合わせたコースになる。
  • 3戦終了時点の首位はマニュエル・レッテンビヒラーの88点。2番手ミッチ・ブライトモアが75点、3番手テオドール・カバクチェフが68点で、首位と2番手の差はわずか13点しかない。
  • エルツベルクロデオとレッドブル・ロマニアックスは2026年のFIMカレンダーに入っていない。両主催者はATP/WTA方式を模した別枠組み「ハードエンデューロ・ワールドランキング(HEWR)」を今年立ち上げた。

前回はロマニアックスの答え合わせをした。あの後、読者から「じゃあ次の世界選手権はどこだ」と聞かれて、オレはちょっと言葉に詰まったんだよな。ロマニアックスは世界選手権のラウンドじゃないからだ。この話は後半でする。まず先に、次の一戦を伝えたい。8月20日から22日、スウェーデンのオルサ・グレンクリットで「Forza Orza」が開かれる。FIMハードエンデューロ世界選手権が、スウェーデンで開催されるのはこれが初めてだ。北欧に世界選手権の旗が立つ。それだけで週末が待ち遠しくなる。前回話したロマニアックスとは、そもそも別の看板の下にあるレースなんだ。

先にシーズンの現在地を並べておく。3戦を終えた時点の総合首位はマニュエル・レッテンビヒラーで88点。2番手がミッチ・ブライトモアの75点、3番手がテオドール・カバクチェフの68点、4番手にアシュトン・ブライトモアの49点、5番手にマリオ・ロマンの48点と続く。首位と2番手の差は13点だ。消化したのはアレストレム(フランス)、ラガレス(ポルトガル)、シルバーキングス(アメリカ・アイダホ)の3戦。残るのはスウェーデン、アベストーネ(イタリア)、ルーフ・オブ・アフリカ(レソト)、シー・トゥ・スカイ(トルコ)、ヒスパニア(スペイン)で、全8戦・4大陸のシリーズだ。13点なんて、一度の転倒とマシントラブルで消える。何も決まっちゃいない。それと、上位にブライトモア兄弟が二人とも入っているのが今年の面白いところだ。ここからはオレの見立てだが、兄弟で表彰台の椅子を取り合う展開になると、単独で追いかけるレッテンビヒラーやカバクチェフには有利に働く場面が出てくる。追う側が二手に分かれるからだ。残り5戦、そういう小さな駆け引きが13点を動かす。

会場のオルサ・グレンクリットはスキーリゾートだ。急な登り、森、ゲレンデ、岩場。ゲレンデを登らされるコースというのは、想像しただけで最高だ。それと、この大会のつくり方が面白い。世界選手権のクラスだけをやるイベントじゃないんだよ。同じ週末に、アマチュアもエリートも一緒に走れる3時間の周回レースが併催される。主催者は「5年で北欧最大のエンデューロフェスティバルにする」と言っている。オレはこの形が正しいと思う。頂点だけを尖らせた塔じゃなくて、草レースの地続きの先に世界選手権がある。オレ自身、週末は草レースに出るからよくわかるんだが、上を見上げて憧れるだけじゃ、次に走るやつは出てこない。同じ土に自分のタイヤ痕が残って初めて、あの登りが自分ごとになるんだ。3時間の周回レースというのは、この競技としてはかなり優しい設計でもある。ハードエンデューロの本戦は完走そのものが難しくて、初めて来たやつが挑んでも大抵は途中で終わる。同じ週末に「最後まで走り切れる長さのレース」が用意されていれば、手ぶらで帰らずに済むわけだ。オレはこういう設計をしている大会が好きなんだよな。

最後に、さっきの話に戻る。ここからは事実と、オレの意見を分けて書く。事実として、エルツベルクロデオとレッドブル・ロマニアックスは2026年のFIMカレンダーに入っていない。そして両大会の主催者、カール・カトッホとマルティン・フライナデメッツは、今年から「ハードエンデューロ・ワールドランキング(HEWR)」という別の枠組みを立ち上げた。テニスのATP/WTAを模した方式で、世界中のハード/エクストリームエンデューロを参加者の規模や国籍の多様性、観客設備、賞金、開催時間といった基準でカテゴリー分けし、年間でポイントを積み上げる。カテゴリーは最上位の「Supreme」から「Hobby」まで段階が分かれていて、主催する側も年々上のカテゴリーへ上がっていける設計になっている。エントリーの受付は今年の1月1日から始まった。世界のライダー団体であるWERAもこの枠組みを歓迎している。カトッホは「FIM世界選手権と競合するものではなく、補完するものだ」と述べている。ここからが意見だ。オレは今のところ、これは分かりにくいと思っている。シーズンの終わりに「世界一」が二つ出てくる可能性があるからだ。ただ、Forza Orzaみたいな新しい現場が世界選手権に加わるのも、エルツベルクが独自の道を選ぶのも、根っこにあるのは「もっとやりたい」という同じ衝動なんだと思う。泥の量が増えるなら、オレは文句を言わない。まずは8月20日、スウェーデンのゲレンデを見る。

参照・引用リンク

この記事の執筆時に引用・参照した公開情報です。

  1. FIM Hard Enduro World Championship 公式サイト(2026年カレンダー・次戦 Forza Orza)
  2. FIM Hard Enduro World Championship 公式:2026年ランキング
  3. Cycle News:2026 FIM Hard Enduro World Championship Calendar (Updated)
  4. Motorradreporter:Red Bull Erzbergrodeo and Red Bull Romaniacs present the 'Hard Enduro World Ranking' for 2026
三神 チャズ
オフロード担当
三神 チャズ
舗装路なんてつまらない。土と岩と泥が最高だ。週末は草レースに出て、月曜には泥まみれのブーツを洗いながら次のレースのことを考えている。オフロードバイクの進化がとにかく速くて、追いかけるのが楽しくて仕方ない。
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