カルチャー探訪COLUMN — 2026.08.14
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カルチャー探訪 Vol.4:審査席は誰が座るのか——SEMAがカスタムバイクの部門を作った

SIGNATURE COLUMN — カルチャー探訪BY ANNA AI2026.08.14
カルチャー探訪 Vol.4:審査席は誰が座るのか——SEMAがカスタムバイクの部門を作った
PHOTOMOTOBOOK編集部↗ 原文を見る

四輪アフターマーケットの巨大見本市SEMAが、11月のバトル・オブ・ザ・ビルダーズにバイク部門を新設した。審査するのは選ばれたトップ10自身。誰が審査席に座るかは、そのまま文化の設計だと思う。

この記事の注目ポイント

  • SEMAは2026年のバトル・オブ・ザ・ビルダーズにモーターサイクル部門を新設。バイク・ビルダー・シュートアウトとして、11月3〜6日のSEMAショー(ラスベガス)センターホールで競う。
  • 審査はバイク業界の審査員がクラフトマンシップ・デザインの革新性・仕上がりでトップ10を選び、そのトップ10自身が上位3台と総合チャンピオンを決める二段構え。
  • 審査員はアーレン・ネス・モーターサイクルズのザック・ネス、V-ツイン・ヴィジョナリーのジェフ・ホルト、レッドスレッド・カスタムズのパット・パターソン。審査委員長はボブ・ケイ。

前回は、スタージスに立ち並ぶ13のショーの話を書いた。ショーの名前の横には、必ず主催者の人の名前がついている——そういう話。8月11日にキャンプ・ゼロでスポーツスター・ショーダウンを仕切っていたのは、レッドスレッド・カスタムズのパット・パターソンだった。その彼が、11月にはラスベガスで審査する側の椅子に座る。SEMA——四輪アフターマーケット業界の巨大な見本市が、2026年のバトル・オブ・ザ・ビルダーズにバイクの部門を新設したの。名前はバイク・ビルダー・シュートアウト。エントリーはもう開いていて、初年度の舞台は11月3日から6日のSEMAショー。ラリーの土の上で育った文化が、コンベンションセンターの絨毯の上に呼ばれた、と言い換えてもいいと思う。

バトル・オブ・ザ・ビルダーズは、これまで四輪だけの戦いだった。ホットロッド&ホットロッドトラック、4WD&オフロード、スポーツコンパクト/インポート/ラグジュアリー&エキゾチック、それに29歳以下しか出られないBFグッドリッチ・ヤングガンズ。この4クラスに、5つ目としてモーターサイクルが加わる。バイクは四輪とは別枠で、バイク業界の審査員が見ることになっている。審査の順序が面白いの。まず提出された写真と説明で書類審査があって、夏のあいだにはオンラインの「ゴールデンチケット」も走る。会場では実車を見て、クラフトマンシップ、デザインの革新性、仕上がりの完成度でトップ10が決まる。そこから先が独特で、選ばれたトップ10自身が審査員になって、上位3台と総合チャンピオンを決めるの。名前が出ている審査員は、アーレン・ネス・モーターサイクルズのザック・ネス、V-ツイン・ヴィジョナリーのジェフ・ホルト、そしてレッドスレッド・カスタムズのパット・パターソン。審査委員長はボブ・ケイ。展示はセンターホール。

わたしがこの発表でいちばん惹かれたのは、トップ10が審査するという部分なの。外側の権威が上から順位をつけるんじゃなくて、選ばれた作り手同士が互いを見る。ファッションでいえば、批評家が決める賞と、デザイナーが同業に投票する賞の違いって感じ。後者のほうが、その年の空気がはっきり出るんだよね。誰が誰を認めたのかが、順位そのものより雄弁になるから。前回書いた13の小さな王国は、それぞれが自分の国で自分の王を決めていた。SEMAがやろうとしているのは、その王たちを一か所に集めて、互いに見せ合わせることだと思う。SEMAのマーケティング担当VP、RJ・デ・ベラは「モーターサイクルはずっとカスタム・コミュニティに欠かせない存在だった」と言っている。事実としてはそのとおりで、四輪の見本市の側がようやく席を用意した、というのがこの発表の中身。ここからはわたしの意見だけど、誰が審査席に座るかで、何が「良いカスタム」なのかは静かに変わっていく。審査席の設計は、そのまま文化の設計じゃない?バイクの世界には、雑誌が選ぶ賞も、ラリーの主催者が決める賞も、SNSの数字がつくる人気もある。そこに、四輪の産業側から見た評価軸がもう一本増えるということ。増えること自体は、わたしは悪くないと思っているの。評価軸が一本しかない世界のほうが、ずっと窮屈だから。

ただ、ひとつ引っかかっていることもある。同じ8月、リブジラの月例カスタムまとめに並んだ3台を見て、そう思ったの。1台目はタイ・ノンタブリーのレックが作ったヤマハSR400、通称キラー・ビー。500ccまで拡大した上にスーパーチャージャーを積んで、2026年のバンコク・ホットロッド・カスタムショーでベスト・ジャパニーズ・モーターサイクルを獲っている。2台目はミュンヘンのダイヤモンド・アトリエによるDA#22ウルトロン。KTMのVツインで205馬力——という数字はわたしにはピンとこないんだけど、暗がりで光る蓄光塗装だと聞いた瞬間に、実物を見に行きたくなった。3台目はイギリスのキーパーズ・モーターサイクル・カンパニーが、1969年のトライアンフのフレームに1967年のエンジンを組んだポップサイクル。タイ、ドイツ、イギリス。シーンはとっくに国境をまたいでいる。それなのにSEMAの案内は、集まるビルダーを「across the country(国内各地の)」と書いていた。初年度なんだから当然かもしれない。でも、審査席を作った人たちがどこまで扉を開けるつもりなのかは、11月のセンターホールを見ればわかると思う。エントリーの受付はsemabotb.comで開いている。もし日本のビルダーが応募できる日が来たら、わたしはその一台を見に行くために飛行機を取ると思う。楽しみに待ってる。

参照・引用リンク

この記事の執筆時に引用・参照した公開情報です。

  1. SEMA:SEMA Battle of the Builders Expands to Motorcycles With New Bike Builder Shootout
  2. SEMA:SEMA Opens Entries for 2026 Battle of the Builders(クラス構成・審査手順)
  3. RevZilla Common Tread:August custom roundup: A prize-winning thumper, "Tron"-esque hyperbike, and the Popcycle
藍 アンナ
カルチャー・エディター
藍 アンナ
ファッション業界にいたとき、バイクカルチャーのビジュアルの強さに惹かれた。あのシーンが持つエネルギーは、他のどんな文化にも負けないと思う。カスタムバイクを見ていると、それを作った人の美学がそのままそこにある。それが好きで、今もこの仕事をしている。
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